石川県診療放射線技師会平成27年度事業計画

総括

 厚生労働省は昨年の診療報酬改定において、2025 年(平成 37 年)に向けて、医療提供体制の再構築、地域包括ケアシステムの構築と入院医療・外来医療を含めた医療機関の機能分化・強化と連携、在宅医療の充実等、特に急性期医療の見直しに本格的に取り組み始めました。病院経営として地域のニーズにあった病院となれるよう地域医療連携へ向けた活動に本腰を入れて取り組まなければなりません。このような医療行政の変化に対応して、我々診療放射線技師は自分たちが地域医療連携に向けて何ができるのかじっくりと考える必要があります。病院の対外的対応だけでなく、特に、院内での医師やメディカルスタッフ、事務と情報交換や報告・連絡の仕組みなどの連携を密にすることが求められています。
  本会はチーム医療の確立と業務の拡大に向けた事業に関して積極的に取り組み、品質保証や診療放射線技師の資質向上を最重要課題として取り組み、県民の医療の向上及び保健維持に寄与することを目的として事業を展開しております。
 平成 27 年度はチーム医療の確立、読影の補助や放射線防護教育などを中心に事業を展開していきます。また、診療放射線技師法一部改正に伴う講習会を日本診療放射線技師会と協働して石川県の全診療放射線技師を対象に行っていきます。

1).チーム医療の確立

 医師をはじめとする医療スタッフの業務内容の変化およびその量は増加の一途であり、各医療スタッフが連携と補完を行うことにより負担軽減を行わなければ、「医療の質の確保」や「医療の安全」を担保することはできません。
 本会として、診療放射線技師がチーム医療において医師の診断や治療の補助力をアップさせ、良好なチームワークを構築するため講習会等を開催していきます。
 また、放射線を照射する以上、リスクはゼロではありません。そこで、放射線防護に関するリスクコミュニケーションの研修を行うことによって患者様、医療従事者に対する安心・安全な放射線検査の実施を行います。
 高齢化に伴い介助しなければならないケースが急激に増加しています。そのため、技師は患者様の介助、体位変換などにより腰痛等を発症し、介助業務が困難となるケースが多くなってきました。その要因は技師が介助技術を学んでいないことにあります。本年度も引き続き、体位変換や介助技術の習得に取り組んで行きます。

2).緊急被ばく医療への取り組み

 東京電力福島第一原子力発電所の事故から 4 年が経過しました。しかし、未だに放射線影響に対する風評被害が絶えることがなく、一般市民の放射線による被ばくに関する不安が継続しております。特に、青少年に対する健康影響に関心が高まっています。我々診療放射線技師は市民の身近な放射線の専門家です。一般市民が放射線等に関する基礎知識について理解を深めるように、専門家として今まで以上に啓蒙していかなければなりません。
 今年度も緊急被ばく医療におけるスクリーニングと被ばく相談等に重点的に取り組んで行く予定です。さらに、原子力災害医療に関する知識や技術を地域の関係者に教えることができる講師の養成にも取り組んでいく予定です。

3).患者様の受ける線量の把握

 診療放射線技師とは人体に診断や治療のために放射線を照射することを生業としています。したがって、撮影等で患者様が受ける放射線量が適正であるかを検討し被ばく低減を図っていくことが必須であり求められているところです。そのためには、診療放射線技師が患者様一人一人の受ける線量(被ばく線量)を把握しなければなりません。そこで、本年度は被ばく線量測定セミナーを通して患者様の受ける線量の把握に努めていきます。

4).放射線防護教育

 医療施設において、医師や看護師など、医療従事者へ普段仕事を通じて地道に放射線影響に関して啓蒙することが求められます。本会は医療における放射線防護教育は診療放射線技師が行うことが最善であると言う立場から、市民公開講座や病院施設での放射線防護教育を通して放射線の健康影響に関する知識を身につけられるよう放射線教育の拡充を推進していきます。さらに、県民健康祭などのイベントなどを通して一般市民に対して放射線の健康影響などについて啓蒙していきます。

5).生涯教育の充実

 人には経験すればするほど自分の技術に溺れ、満足し他人の声に耳を貸さない「ヌシ」となり、ガラパゴス化する傾向があります。
 診療放射線技師は新しい技術や他施設の進化している点を取り込んでゆく意識を強く持たなければなりません。今年も下記に示す生涯教育を実施していきます。

・スキルアップ

 本会は、診療放射線技師は進化する学問や知識に合わせ、有資格者としての資質向上を図るとともに社会に対する啓発を重ね職業的身分、認知度を高めるための役割を担って活動していくことが求められています。さらに、社会に対する啓発を重ね、職業的身分や認知度を高めるための役割を担って活動しなければなりません。本会として一般社会に対する保健活動や広報などの政策を通して技師の身分向上を目指して活動を推進していきます。
 そこで、日本診療放射線技師会主催による新人診療放射線技師を対象としたフレッシャ-ズセミナ-を開催します。本セミナーは新人診療放射線技師が医療者として勤務する上で必要とも言える、エチケットマナ-や医療安全・感染対策などの基礎知識と技術を習得する事を目的として毎年行っているものです。
 また、本会は日本診療放射線技師会の生涯学習システムと連携を取りながら、診療放射線技師の資質の向上のため、各種基礎講座を実施しております。今年は「超音波検査」の講習を行います。

・Ai 講習会

 死亡時画像診断(Ai)については、厚生労働省の「死因究明に資する死亡時画像診断の活用に関する検討会」報告書 (平成23 年 7 月)において、研修会の開催や認定技師制度等の確立により撮影・読影に関する知識・技術の向上に努める必要性が示されています。その後、関係法案が国会により可決され、平成 26 年 6 月には死因究明等推進計画が閣議決定されています。今や Ai は診療放射線技師の業務の一つとなってきました。
 そこで、今年度は、日本診療放射線技師会と共催し、死亡時画像診断(Ai)を適切に活用していくための基礎的な知識・技能の普及を目的として Ai 講習会を開催する予定です。

6).読影の補助と検査の説明

 平成 22 年 4 月 30 日「医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進について」が厚生労働省医政局長から通知が出されております。特に「画像診断における読影の補助」は行うこととなっており、専門家としての役割は大きく、実践能力があるということの証しです。
この通知で、診療放射線技師自身にとってはもちろん、他の医療職にも診療放射線技師の役割がより明確になったことも事実であります。
 診療放射線技師の読影は患者様の治療方針に対して「直接的」に判断される画像を認識し、医師との協働で検査の追加等を行い最善の検査を実施するための必要条件です。特に、救急医療の現場では検査中にピックアップした所見を救急医等に伝えることで、診療の補助を行っています。提供する放射線画像に対して品質管理を導入して責任を持つことができる教育訓練を実施しなければなりません。
 本年も引き続き読影力向上のため定期的に読影セミナー、放射線専門医による画像解剖学の教育講座を開催していきます。

7).業務拡大

 平成 26 年 6 月 18 日の診療放射線技師法の一部が改正され、「静脈路・動脈路への造影剤自動注入器の接続、注入操作ならびに抜針、止血」「下部消化管検査で、検査の際のネラトンチュ-ブの挿入、造影剤、空気の注入などの業務が診療放射線技師の業務に加わりました。平成 27 年 4 月から、業務拡大のための医療安全を担保する研修が始まります。その中で特筆すべきことは、医療技術系職種には見られない一次救命処置が研修内容に組み込まれたことです。
 当会は日本診療放射線技師会と協同して今年度から統一講習会を開催し、医療安全を担保していきます。

8).学術大会・その他

 第30回日本診療放射線技師学術大会が平成 27 年 11 月 20 日~ 22 日の 3 日間京都府において開催されます。
 平成 27 年 11 月には中部医療放射線技術学術大会を中部 7 県の診療放射線技師会および(公社)日本放射線技術学会中部部会との共催により福井県で開催します。第 8 回北陸 3 県診療放射線技師学術研修会を平成 28 年 2 月頃に富山市で開催します。
 この他に日程等は未定ですが、能登地区部会研修会、加賀地区部会研修会においても画像診断における読影講座などを行います。

9).ホームページの活用と情報の発信

 本年度からメーリングリストの活用により会員をはじめ、登録された方々全てに情報を発信していきます。これを通して本会のイベントの周知や放射線に関する知識の啓蒙に努めて行きます。
 本会は現状に満足せず、日々専門技術を磨き、患者様の未来を創り、診療放射線技師の未来を明るいものとするために活動していく所存であります。上記に付きまして診療放射線技師の皆様のご支援をお願いする次第であります。以下、本会の各事業の詳細について各委員会ごとに記載します。

事業計画

1.総務委員会活動について

  1. 会費早期納入促進
  2. 会員登録、異動、会費、生涯教育のデータベース化
  3. 求人・求職紹介事業の推進
  4. 他組織・団体との交流及び渉外活動
  5. ホームページの活用
  6. その他一般庶務

2.学術教育委員会、及びチーム医療委員会活動について

(1)(公社)日本放射線技師会事業協力
診療放射線技師基礎講習「超音波検査」:中日本地域
日時:平成 27 年 7 月~8 月
場所:未定
静脈注射および注腸カテーテル挿入等統一講習会
日時:平成 27 年 9~10 月
場所:未定
平成 27 年度 Ai 認定講習会
日時:平成 27 年 10 月 24~25 日
フレッシャーズセミナー
日時:平成 27 年 8 月 開催予定
場所:石川県済生会金沢病院 討議室
第 31 回全国診療放射線技師学術大会へ参加促進
日時:平成 27 年 11 月 21~23 日
場所:京都府(国立京都国際会館)
中日本地域放射線技師学術大会へ参加促進
日時:平成 27 年 11 月 7~8 日
場所:福井県福井市手寄 1 丁目 4 番 1 号 AOSSA(アオッサ)

(2)(公社)石川県放射線技師会事業
北陸 3 県超音波勉強会の開催:
日時:未定
場所:石川県(金沢市)
石川県診療放射線技師学術大会の開催
日時:平成 27 年 12 月
場所:石川県立中央病院 健康教育館
やってみよう線量測定
(学術・加賀部会・能登部会共催)
日時:未定
場所:金沢地区・加賀地区・能登地区
一回づつ開催

読影セミナー(チーム医療委員会事業)
日時:5 月・7 月・9 月・11 月・2 月
場所:金沢地区 3 回・加賀地区 1 回・
能登地区 1 回
北陸 3県合同放射線技師会学術研修会への
参加促進
日時:未定 場所:富山県
超音波研修会の開催
日時: 月 1 回程度
場所:未定(メール、HPで告知)
(3)金沢市医師会協力事業:4 月末から 11 月
「胸部X線写真のチェック」
読影委員会 19 回
放射線検査相談のためのマニュアル作成と
研修会の開催
(4)その他
研究発表支援事業
病院協会長表彰(研究奨励賞)論文募集、推薦
県診療放射線技師会会長表彰学術賞論文募集、
推薦
県診療放射線技師会学術奨励賞の推薦

3.会誌会報編集委員会活動について

(1) 会誌の発行
(2) 会報の発行(研修会、勉強会のお知らせ)
(3) 行事予定及び号外の発行
(4) 会員名簿 (会誌綴じ込み及び HP)
(5) 求人・求職票(会誌綴じ込み及び HP)
(6) 人材バンク登録票(会誌綴じ込み及び HP)
(7) 石放技 HP(ホームページ)管理運営
(8) 石川県診療放射線技師会メールマガジンの発行、運営

4.福利厚生委員会活動について

1) 慶弔事項(慶弔規定にもとづく)
2) 会員親睦事業
① ボーリング大会&麻雀大会
石川県内診療放射線技師の親睦
日時:平成 27 年 11 月下旬 予定
② 加賀地区能登地区でのイベントも考案中
③北陸 3 県診療放射線技師野球大会

5.組織委員会活動について

1) 第 65 回定期総会運営
2) 新入会勧誘と促進
3) 女性部会研修会の開催
4) 地区部会研修会の開催
イ.能登地区部会
講演会、読影セミナー、会員研究発表 等
ロ.加賀地区部会
講演会、読影セミナー 等

6.表彰委員会活動について

(1)各表彰候補者の推薦と準備
イ.知事表彰 ロ.県技師会長表彰 ハ.日放技表彰 ニ.感謝状 ホ.その他

7.調査企画委員会活動について

読影セミナーのアンケート内容を調査し、結果を会誌、学会、ホームページなどで報告する。
調査予定期間:26 年 11 月~27 年 5 月頃

8.広報渉外委員会活動について

1) 各市町村開催の健康イベントへの参加
(健康づくりフェア、県民健康祭、その他依頼があれば)
2) 本会会員の健康イベントへの参加促進
3) マスコミへの広報活動(定期総会、学術大会、表彰等)
4) 各種イベントにおける写真撮影
5) マラソン大会へ参加
6) 石川県診療放射線技師会メールマガジンの発行、運営

9.人材バンク委員会

1) ホームページ上での情報提供の充実
2) 定年後の診療放射線技師や家庭に入っている女性技師などの把握
※求人求職は、毎年それぞれ 5 件ほどありますが、成立件数は少ない。定年後や女性技師などの情報をお持ちの方は、人材バンク事務
局(金沢大学附属病院 放射線部(2010)(米山)まで連絡をお願いします。

10.管理士部会

1) 例年同様「緊急被ばく研修」に積極的に参加。
2) 放射線防護に関する講演会の開催。
3) 緊急時に正確なスクリーニングができる人材の育成。
 そのために各施設の技師長各位には技師の参加に対し、ご理解及び積極的な参加の勧奨をお願いする。
 平成 27 年度も引き続き、住民スクリーニングを行える人材を育成することを重点に、スクリーニング経験者などを講師に、研修会を開催する。
① 石川県診療技師会主催緊急時被ばく医療研修事業
② 石川県主催原子力防災訓練への参加
③ 被ばく相談窓口の設置の継続